ご夫婦で土器やガラスのアクセサリーを作る「タビノキセキ」
男女問わず魅きつけられるその魅力は、アクセサリーの美しさだけでなく、二人のルーツや考え方に見ることができました。
【旅の出会いから今まで】
二人が土器やガラスのアクセサリーに出会ったのは旅先。
ユウジさんは、日本・インドなどを旅し、1997年に渡英。ロンドン滞在中にクラフト制作を開始し、2000年アフリカ ジンバブエにて土器の制作を始めました。
2003年に帰国後、独自のブランドを立ち上げます。
ナツさんは、2007年に旅の途中で出会ったガラスに魅せられ、単身渡米。オレゴン州ユージーンにてホームステイをしながらガラス制作を学びます。帰国後、沖縄に移住し、独自のブランドを立ち上げ、自然をモチーフにしたガラスジュエリーの制作を開始します。
そして二人が出会い、2010年タビノキセキを設立。現在、糸島の工房を拠点に活動中です。
【二人だからできること】
こうしてユウジさんが土器や縄編みを、そしてナツさんがガラスの技術を持ち寄って生まれたタビノキセキ。
今ではユウジさんが、ガラスの技法を学び、妊娠中のナツさんに代わって作っているそうです。
ナツさんは曰く、
「彼は器用だから、私が数ヶ月かけて習得しても、3日くらいでできてしまう」とのこと。
さらにユウジさんは、こうして土器だけでなく、ガラスを作りだしてから女性向けのデザインを意識して小さいものを作るようになったそうです。
それぞれの持ってるものを共有して、お互いに刺激し合って、幅を広げ合える夫婦の在り方って本当に素敵だなと思います。
ただし、ガラスのペンダントの中でも、ハート型のものだけは、ナツさんの担当だとか。
ハートの形の良さはやはり女性の方がわかりますよね。
技術を共有しても、ユウジさんにか出来ないこと、ナツさんにしか出来ないことがしっかりある。見ていて気持ちのいい関係性です。
【誰も作ってないものを作りたい】
ユウジさんは、「価格競争に入ってしまうよりは、オリジナリティで勝負したい。自分しか作ってないものを作りたい」と言います。
普通、割れ物では作らない指輪をガラスで作ってみたり。
割れた時に始めて中の色が見えたり、擦れてくることで下から色が出てくる土器など。
そういうマニアックな楽しみも提供したい、と語ります。
そういう価値観を良いって言ってくれる人がいるのは嬉しい、と。
工房の中を覗くと、土器の両面に色をつけるための道具を工夫したり、陶器用の釉薬ではないものを使って色をつけたりなど、たくさんの試行錯誤を繰り返していることが伺えました。
最近は金や銀をかけた作品もあり、工夫を重ねるほど、焼いたり磨いたり燻したり、手間のかかる行程が増えますが、その努力こそが自分しか作れないオリジナリティにつながっているのだと感じることができました。
それでもユウジさんは、「こうして自分しかやってないオリジナルの技法を考えるのも楽しい」と言います。普通は大変だと思うことを楽しんでできる人には誰もかないませんね。
【旅はつづく】
ナツさんは「いろんな場所のアクセサリーを見れるのが楽しくて旅をしていた」と言います。
ユウジさんは「このおかげでいろんな人と繋がれた。アクセサリーで世界中繋がれるのが嬉しい」と言います。
色んな旅してきたお二人。
どこへ行ってもものづくりを通した共通の「言葉」があり、それがあったから見れたものがあったんですね。
今後は現地(海外)でアクセサリーを作っていきたいという想いもあるそうです。
そして今度は、以前旅をしていた時に助けてもらった人に会ってお礼をする、そんな旅をしたいとも言います。
「そうか、二人はまだまだ旅の途中なのだ」と思えた取材でした。
インタビュー 前田 綾子・千々岩 哲郎
写真と文 山下 舞
取材日 2013年8月